ああ、大変口ずさむだけで泣きそうだ
サクラメリーメンのライブには一度だけ行ったことがある。
「キャラクター」というアルバムが発売されてすぐの頃だ。二度目の下北沢。通りすがりにカレーに匂いがした。地下のライブハウスにビクビクしながら入っていって、財布の入ったショルダーバッグをぎゅうぎゅうに握りしめながらライブを楽しんだ。耳慣れたベース音が聞こえるだけでよかった。ここにあるのはピンクグレープフルーツで、オレンジジュースで、三ツ矢サイダーなんだと何度も思った。
私は「待ちぼうけ」という曲でサクラメリーメンと初めましてをした。
四畳半の部屋に寝転がって歌う不思議なMVだった。何となく、キンモクセイをもっと甘酸っぱくしたような感じだなと思った。明るく影を残していく歌だなと思った。テキトーにアイサレタイというフレーズがやけに耳に残った。そう、出かけなくてもお金は使えるので、なるべくなら風邪を引いて寝てたい のである。
それは否定的な否定ではなくて、楽観的な否定だなと思う。そしてどちらも時折びっくりするくらい闇を孕んだ曲を書いたりする。
今年の春から昼食の時間にヘッドホン片手に短い散歩を始めた。
気づいたことがたくさんある。
ある運送会社のトラックがいつも同じ場所に停まっている。
見るたび空瓶でいっぱいの空缶がある。
大会社の前ほど落ち葉は片付いていない。
タンポポが意外とたくさん咲いてる。
落ち葉を踏みしめる感覚は最高で、できることならこのまま寝転がりたいと思う。
どんぐり拾った。鉢植えに落としておいた。
KOSSの開放型ヘッドホンで音楽を聴いている。シャッフル。基本私はシャッフルが好きだ。自分の頭の中とおんなじでぐっちゃぐちゃ。混沌の渦そのものである。
サイハテホームのイントロが流れると、まだ浮かびもない涙を想像して少しだけ顔をあげる。
マスクの下で一緒に口ずさむ。
これは私が全く体験し得なかった青春の歌だ。特に体験したいとは思わないけど、側から関わりたいなとは思う。当て馬は嫌だけど背中を押す頼りになる姐御みたいな存在にはなりたい。
そんなことはどうでもよくて、とにかくメロディーがいい。シンプルな3ピースバンドはこれがいいんだよなぁと思う。
地図上の世界では君の街なんてすぐそこなんだけど、電車に乗って、居心地の悪い椅子も我慢して会いに行きたいなんて、そんな世界がどこかにあるんかなあって毎回、夢を見させてくれる。
散歩は、なるべく、生涯歩数を増やすために続けたいです。